村上春樹と午後のスパゲッティ


その日の昼下がり、僕はキッチンでスパゲッティを茹でていた。
家にある一番大きな鍋に、たっぷりの湯を沸かす。塩をいれる人もいるが、僕は入れない。スパゲッティ本来の味が、損なわれるような気がするからだ。

窓の外は晴れていて、2月にしては暖かい日だ。天気予報では3月中旬の陽気だという。
テーブルの上ではSONYのラジオが、クラシック音楽を流している。ハイドンだろうかリストだろうか、僕はクラシックには詳しくないのでよく分からない。ただ、こんな午後には相応しい音楽だ。

村上春樹の小説ならこんな時、謎の女から電話が掛かって来るところだ。しかし僕のiPhoneは、眼の前でスパゲッティの茹で時間を静かに刻んでくれている。世の中は平和だ。

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